地下鉄

地下鉄の安全性、歴史、構造、建築工法などを簡単に紹介。

地下鉄の構造 - 車両

開業当初のロンドン地下鉄の車両は蒸気機関車だったため、石炭を燃焼した際の煙を水槽内の水に通過させることによりトンネル内に排出される煤煙と熱を抑える構造を備えていた。

その後は電気鉄道となるが、概ね幅2,500mm程度、長さ15,000mm程度の小柄な車両が用いられた。その後、幅2,800mm、長さ18,000mm程度までに大型化する。第二次世界大戦後はさらに車両が大型化し、東アジアでは幅2,800 - 3,200mm、長さ20,000mm程度の大型車両が用いられる例(東京、ソウル、シンガポールなど)もある。一方で建設費の点でトンネル断面を小さくした結果、車両も特殊な小型車とする例(イギリス・ロンドンのチューブ、グラスゴーブダペストなど)もある。

車両性能は高速性能より高加減速性能や登坂性能が重視される。このため、電動車の比率が高い。既存の構造物を避け、道路下などの狭隘な土地に建設されるため、急曲線と急勾配が多く、駅間距離も短いためである。

車体は大量の人員を輸送する関係で多くの扉が取り付けられている。全長18,000mm以上の車両を中心に片側4扉以上の車両もあるが、世界的には1両当たり片側3扉が主流である。また列車の編成長は欧米で100 - 120m前後、アジアでは200m程度のものもみられる。

座席は欧米ではクロスシートの例が多く、アジアではロングシートが多い。また宗教的な理由や痴漢対策という観点から女性専用車両が導入されている国がいくつかある。

素材には外板には燃えにくい金属材料を使用するのはもちろんのこと、内装材にも不燃性、難燃性の素材が推奨されている。これは避難経路の限られた地下空間での火災の発生が大惨事を招く可能性が高いためである。しかし内装材については、日本などの一部の国を除いては依然として可燃性の素材が用いられていることが多い。中には古い全木製の車両が使われている路線もある。

地下鉄車両の冷房化はそもそも欧州では必要なところが少ないが、それ以外でも遅れた。これには以下の理由がある。車内を冷房すればそれによって発生する熱とドレン水が車外に放出され、トンネルと駅が蒸し暑くなる。次に冷房用の電源(第三軌条や架線より低圧の交流電源が一般的)が必要であり、電動発電機を大容量のものに換えるか別に搭載する必要があり、その場所を確保できなかった。そもそも第三軌条を採用した地下鉄は車両限界が小さく、冷房装置を積むだけの空間も無かった。

しかし、技術の進歩によってこれらは解決された。大きな要因は、発電ブレーキから回生ブレーキへの進化で大容量の抵抗器が不要となったことと、制御方式に抵抗器を用いないサイリスタチョッパ制御やインバータによる可変電圧可変周波数制御(VVVF制御)が普及したことが挙げられる。これによって車両から熱源を無くすことが可能となり、さらに冷房用の電源を積むスペースもできた。その電源にも、電動発電機より小型の静止形インバータ(SIV)を採用することで、より省スペース化が進んでいる。冷房装置そのものについても小型・高効率化がすすみ、第三軌条集電の車両でもその屋根に薄型のものを置けるようになった。

現存する特殊な車両を用いる例として、ゴムタイヤ式が挙げられる。フランスと日本でそれぞれ異なる方式が開発された。フランスのものはカナダのモントリオール万国博覧会の開催に合わせて建設された。これはゴムタイヤを使用した最初の路線であった。通常のレールと車輪を案内とし、その外側にゴムタイヤとその踏板を設ける方式である。他にパリ、メキシコシティでも同様の方式が採用されている。これに対し、日本の札幌で実用化されたものは、走行用のゴムタイヤのほかに中央に1本の案内軌条を作り、それをゴムタイヤで挟む方式で、鉄軌と鉄輪を持たない。ゴムタイヤ方式では騒音の発生が少なく、発車時の加速度や停車時の減速度が高く、その変化も滑らかであるという特徴を持つが、消耗したタイヤの粉塵が舞うことから健康被害を心配する声もある[2]。また、転がり抵抗が鉄輪式に比べ大きいので消費電力が多く、タイヤの交換周期も短いためランニングコストが鉄輪式よりも高くなる。タイヤには荷重負担力の大きいラジアルタイヤが用いられており、パリでは過去にパンクした際、内部のスチールコードが第三軌条と接触して短絡する事故も起きている。

建設費を抑える為、1980年頃からは性能を保持したまま車両を小型化することが可能なリニア誘導モーターによる非粘着推進の車両が登場した。

車両の搬入については地上に置かれた車両基地へ送る、地下の車庫の直上に搬入用の穴を設けてクレーンで下ろすといった方法がある。車両メーカーからの車両基地への輸送方法は乗り入れ先の地上を走る鉄道線経由で送り込む、他の鉄道路線との物理的な接続がない場合には一般道路をトレーラによる陸送で送り込む方式が採られている。

 

参照:Wikipedia地下鉄